課題
磁場環境を変化させ、植物の生長促進・抑制と植物の構成物質の調節を提供するための生育の研究。
目的
水耕栽培(養液栽培)で植物の必須元素に変動磁場を作用し励起させることで、次の目標達成を図る。
①野菜の栄養価(ミネラル、ビタミンなど)の調節
②生育期間の短縮
実験方法および結果・考察
植物の生長段階に対応した必須元素、水、酸素などの核種を励起させ成長促進・抑制と構成物質の調節をおこなった。前記励起の磁界は、植物体内、水、培養液などへ充分に浸透する長波長の変動磁場を曝露させる方法とする。
実験は、変動磁場の有無で植物体の変化を生育中と収穫後の観察・調査をおこなった。
【A】 生育中のCO2吸収量の比較 【発芽期・成長期・成熟期でH・K・N・Caを励起】
【B】 収穫後の生体重、乾物重の比較 【収穫後に生体重と乾物重を測定】
【C】 収穫後の構成物質の比較 【ミネラルのK・Ca・Mg 】
【A】生育中の変動磁場とCO2吸収量(小松菜)
小松菜(品種名:コマツナ、カネコ種苗社)の種子を養液栽培器の栽培スポンジに播種し、定期的に培養液(OTAアグリ㈱:1号、2号混合)を注入しながら光合成調査を約1カ月間おこなった。発芽期、成長期、成熟期で幾つかの特定物質(ターゲット物質)を活性化し、二酸化炭素計(株式会社FUSO製:TES-1370型)でCO2を測定した。
密閉された養液栽培器内のCO2量、1000ppmで計測スタートとし、1時間後の養液栽培器内のCO2濃度値を測定し、変化量(⊿ppm)算出する方法で光合成調査をおこなった。(使用装置:④・⑤)
生育段階 |
発芽期 (播種から発芽過ぎ) |
成長期 |
成熟期 |
||||
ターゲット物質の核種 |
水(H) |
根(K) |
葉・細胞(N・Ca) |
||||
共鳴周波数(Hz) |
1,988 |
91.93 |
124 |
132.3 |
|||
回数 |
1回目 |
2回目 |
1回目 |
2回目 |
1回目 |
2回目 |
|
CO2の変化量(Δppm) |
標準区(変動磁場無し) |
51.7 |
56.3 |
88.3 |
132 |
136 |
193 |
試験区(変動磁場有り) |
39.5 |
51.5 |
106 |
143 |
169 |
174 |
|
効果 |
抑制 |
抑制 |
促進 |
促進 |
促進 |
抑制 |
本調査で植物の環境磁場を調節することでCO2吸収量の調節が出来、植物の生育調整・抑制と構成物質の調節が可能であることを確認した。
【B】変動磁場と光合成産物の比較(小松菜)
前記Aと同様に小松菜(品種名:コマツナ、カネコ種苗社)の種子を養液栽培器の栽培スポンジに播種し、定期的に培養液(OTAアグリ㈱:1号、2号混合)を注入し小松菜の生育状況の実験をおこなった。 試験区には毎日朝6時~17時まで変動磁場を曝露、標準区は曝露なし。
両区とも定期的に生育調査(葉数、葉長、根長等)を測定した。1カ月後に収穫調査(生体重と乾物重)をおこなった。(使用装置:①・②)
回数 |
1回目 |
2回目 |
||
生体重(g) |
乾物重(g) |
生体重(g) |
乾物重(g) |
|
標準区(変動磁場無し) |
8.42 |
0.77 |
16.67 |
0.93 |
試験区(変動磁場有り) |
12.54 |
0.96 |
17.61 |
0.98 |
本調査で植物の環境磁場を調整することで光合成生産物(乾物重)の増加を確認した。
【C】変動磁場と構成物質の比較(カイワレ)
カイワレの種子を養液栽培器に播種し、培養液はOTAアグリ㈱:1号、2号混合で10日後に収穫し定量成分分析をおこなった。
磁場暴露のターゲット物質の核種は、前記Aの小松菜と同様で、分析はICP発光分析装置(神奈川県産業技術センター)でおこなった。
分析物質名 |
カリウム |
カルシウム |
マグネシウム |
標準区(変動磁場無し) |
16 mg/g |
16 mg/g |
6.4 mg/g |
試験区(変動磁場有り) |
18 mg/g |
17 mg/g |
6.5 mg/g |
本調査で植物の環境磁場を調節することで構成物質の増加を確認した。
今後の課題と調査・追加検証実験などに関して
- 低磁界の核磁気共鳴信号の調査・検出実験
①低磁界共鳴信号の確認・検証実験。 - 直流磁界、交流磁界の強さを1:1、1:10、1・100とパラメータ可変での調査・実験
- 変動磁場の暴露時間の可変と24H連続(昼夜、夜間連続と夜のみ曝露)の調査・実験
①光合成(明反応・暗反応)と変動磁場の関係
②光合成と変動磁場暴露の時間の依存性 - 生育期で変動磁場とCO2吸収量が核種により抑制、促進効果が生じる解明の調査・検証実験
- 変動磁場による人為的な気孔開閉の可能性の検証実験
- 変動磁場によるカリウムイオンの移動検証実験
- 植物の必須元素16種などに対して変動磁場曝露の調査・実験
①生育に必要不可欠の元素、窒素(N)、りん(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、鉄(Fe)、などの変動磁場暴露の検証実験
②生長を助ける元素のナトリウム(Na)、ケイ素(Si)の変動磁場曝露の調査・実験 - ミネラル、ビタミン量の調節が可能となる核種の調査・実験
- 水・培養液に対して変動磁場曝露の調査・実験
①水素イオンのみの変動磁場暴露で明反応、暗反応調査・実験。 - 地上部・地下部(培養液)に対する調査・曝露実験
- イカダモ(藻類)の変動磁場曝露の調査・実験
- 小松菜以外の植物体を検討する。 果実が実る植物(ミニトマト、イチゴなど)
- 薬用植物を対象とした調査・検証実験の検討
まとめ
本課題の植物の栽培方法は、水耕栽培(養液栽培)において植物体の地上部、地下部と養液等へ2種類の磁界(直流、交流)を直交曝露することで、植物の光合成活性を人為的に操作し植物の生長促進と抑制及び植物の構成物質の調節の可能性を見出した。
今後、各方面と『磁気と植物』をテーマとした話し合い持ち、よりよい方向を見出し、それにより本課題を発展させ実用化へのステップを図る。また関心を示していただいた大学、研究機関、企業等と話し合い、共同研究の可能性を探る。